wake up call

妙な気分だった。
砂塵の惑星、リリパニウム採掘基地の戦場に降り立っていても、妙な気分は晴れなかった。
戦う愉悦へ逃避をした私は、その戦地で奇妙な高揚感に燻られていた。
異様なまでに昂る戦意。いつもが200度なら、今日は400度だろうか。

妙な気分だった。
部隊の皆の声が、ひどく遠く聞こえる。
愛しいあの人の声すら、はるか彼方から聞こえてくる錯覚。
高揚感に炙られ、熱した鉄のように真っ赤に燃え滾っても、あの人の声は澄んで聞こえる、はずなのに。

妙な気分だった。
カタナを振るい、ダーカーを刻む。
いつもなら、手ごたえと共に、私の気分はさらに高まっていくはずだった。
しかし、それがない。むしろ、中身の無い虫型ダーカーのせいか、物足りなさすら感じる。
高めに高まった戦意が削がれていくが、同時に、締め付けるように重たいものが圧し掛かる。

妙な気分だった。妙で、仕方の無い気分。
それは、経験したことの無い、激しい渇きと、飢え。
身体が血肉を欲している。身体が魂魄を欲している。
生物の血を浴び、肉を喰らい、魂すら砕く感触を欲している。

ダーカーではソレを果たせず、私の上はこの短い時間で、積もりに積もっていく。
ともすれば、人が獲物に見えるほどに。

―――『いつまで出しゃばってるつもりだ』

内側から、声が聞こえる。
ココ最近、朧げに、頭に響いていた奇妙な声。今日は、それがはっきりと聞こえる。
冷たく、そして熱い声。


―――『やっと目が覚めた。もう、後付のお前は用無しだ』

喧しい。用無しだと。私は私だ。私の中でしゃべるな。
声がするたび、頭の奥がひどく痛む。身体が乾く。


―――『ああ用無しだ。コレは私のために作った身体だ。お前のモノじゃぁない』

喧しい、やかましい。お前は誰だ。私の中ですきかって。


―――『好き勝手とはお前のことだ。いい加減、明け渡してもらう』

頭の痛みが強くなる。飢えと渇きも、より一層。
身体が、私の意識とは全く違う動きをする。
今までとは違う動きで、ダーカーを駆逐していく。

―――『ふん、リハビリ程度にしかならん連中だ。まぁ、いい』

やめろ、やめろ、やめろ、勝手に、私の身体を動かすな。やめろ!


―――『いい加減目障りだ、消えるまで、奥に押し込んでやる。役目を終えた人形め』

ふっ、と痛みと飢えが唐突に消える。
だが、私自身の意識も、遠ざかっていくような感触。
視界が段々白くなっていく。言葉を発することも出来n




この日から、私は「私」では、なくなった。

  • 最終更新:2015-09-13 20:46:25