Just now ~惨殺丸の最後~

注!:ちょっとショッキングな表現とか内容が一杯あります。ごめんなさーい。最後は派手に・・・

チームルームでC小隊の隊員同士で話していたときのこと。
たまたま幽霊の話題になり、一人の隊員が怖がり始める。
それを励まそうと、残雪丸が言う。
「私のお家で呪い殺された人なんていないですから・・・そ、その・・・幽霊なんて・・・」
そう言った後に気がつく。

「・・・あ」
昔、自分の家と並び、暗殺業を営んでいた「久々利家」の存在を。
彼らは呪殺を行っていたという話を、聞いたことがあった。
久々利家と闇縫家が遠い過去に争ったことがあった時、
それで何人もの闇縫の人間が殺されたという話を思い出した。

「・・・だ、大丈夫です・・・」
そう久々利家はとっくの昔に廃業をした。もう呪い殺す術は遠い昔に封印されたはずなのだから。




アークスシップ、市街エリアの一角。
ダーカーの襲撃によって荒れており、まだ復旧作業が行われない当エリアは
立ち入り禁止とされていたはずである。

にも関わらず対峙した二つの影が見える。

「こんなところにレディを呼び出すなんて・・・紳士じゃないわね」
長い髪を後ろで結った女性らしき影がもう一人の影に向かって話す。

「大変失礼した・・・女性だと思っていなかったのでな」
三度笠のような帽子を被った影が静かに返す。

空調が壊れているのか、時折シップ内とは思えないような強い風が起こる。

「・・・しかもその言い方。フォローになってないわね」
髪の長い影は、強い風に吹かれる自分の髪を気にしないように、立ち尽くしたまま言い返す。

「そうだな・・・お初にお目にかかる、我が名は久々利冥道。深淵、現・第二位だ。元第二位・・・惨殺丸とお見受けする」
こちらも直立不動のまま語り出す。

「ふうん・・・久々利家の暗殺者ね。久々利はとっくに廃業してたはずだけど?」

「左様・・・愚かにも先祖は久々利の暗殺者としての能力を捨てた。だからこそ我が」
久々利と名乗った影は錫杖を両手に持ち、構える。
「私が・・・再興させるのだ」

「・・・だからって私と戦ったって意味はあるのかしら?」
あわせるようにカタナに手をかける、惨殺丸と呼ばれた影。

「あるさ。かつて闇縫最強と呼ばれた惨殺丸・・・
 御三家と称された闇縫の最強の相手を葬り、久々利家再興の前祝いとするために、な」

「祝いになるかしら・・・ね」
「いざ、尋常に・・・勝負」
二つの影が、今交錯する。





既に数度斬り合いを行っているが、決着が付く様子は見られない。
惨殺丸も冥道も、お互いの衣服に傷をつけるだけに留まっている。

「・・・そろそろ遊びは終わりにしたらどうかしら」
惨殺丸がカタナを構えたまま話しかける。

「斬り合いが本分じゃないはずよ、久々利家は」


「ふ、当然。お主に走馬灯を見せてやる時間を作ってやっただけだ。ここからが久々利の・・・」
突然男が顔の前に錫杖を横に倒して構える。

「久々利家の、本領発揮よ」
突然、冥道の前に3人のアークスが現れる。どれも持っている武器からかなりの腕前と見て取れた。
「行け」
冥道が命令すると3人のアークスは一斉に惨殺丸に襲いかかる。

彼らの剣撃をカタナでいなす惨殺丸。しかし、徐々に押されてくる。そして、
一人のアークスのソードが彼女の左肩めがけて振り下ろされる。

「・・・」それを黙って受ける惨殺丸。すると、ソードは彼女の身体をすり抜ける。

「・・・どこで手に入れたの?この幻は」
気がつくとアークスは消えて、また冥道と惨殺丸のみがその場に立っていた。

「さすが・・・久々利家の幻術はお見通し、という訳か」
肩で笑う冥道。

「ええ、これぐらいの知識はあるわ。元御三家だものね」
惨殺丸は笑いもせずに返す。

「そうだな・・・だが、自分の左手を見て見たらどうだ?」

何かが近くで落ちる音がして、ふと左手を見る惨殺丸。すると本来、左腕があるべき場所に腕がなかった。
「な・・・」

足元に転がる自分の左腕を見て、初めて動揺した顔を見せる惨殺丸。

「ははは・・・お前の知ってる幻術など・・・久々利の古ぼけた技でしかない。
 私は久々利再興のため・・・新しい術を身につけたのだ」
勝ち誇るように笑う冥道。

鞘を地面に投げ捨て、右手でカタナを持ち、斬りかかる惨殺丸。
「無駄よ」
冥道はかわすこと無く、先ほどと同じように斬撃を受ける。
しかし、惨殺丸と違って身体に傷はつくことはない。

さらにカタナを捨てた惨殺丸が掴みかかるもすり抜ける。


「な、なぜ・・・こんな術。久々利家に・・・」
焦燥の色を浮かべる惨殺丸。

「だから言ったろ。これが我が久々利 冥道の幻術だ。我が・・・深淵第二位の私の実力だ」
突然背後から現われる冥道。そして振り下ろされる錫杖。

すぐさま拾ったカタナで防ごうとする、しかし
「!」
錫杖で頭を殴られる惨殺丸。
膝をつくが何とか倒れずに体勢を立て直すも、頭部からの出血で右目が血で塗れる。
一瞬、視点が定まらず先ほど自分が投げ捨て、地面に転がってる鞘に視点があった後、すぐ冥道を見る。

カタナは根元から刃が消え去っていた。

「な、何が起こっているの・・・」
「知らなくていいさ、どうせお前はここで死ぬのだからな」
惨殺丸は既に主を失った腰の鞘を手に取り、まだ抵抗しようとする。が・・・

「え・・・」
膝をついた惨殺丸の前に、立っていたのは・・・

「ははは。御三家の最後に残った家、といえどもこの程度。闇縫、最強と呼ばれた惨殺丸の・・・」
立っている相手を見た瞬間に動けなくなる惨殺丸を見て、上機嫌になる冥道。

身動きひとつしない惨殺丸に、目の前の者がカタナをななめに振り下ろす

「最後だ」
一瞬の間を置いて惨殺丸の身体から首が離れ、地面に落ちた。



「ふ、所詮この程度か・・・」
惨殺丸だったもののを見下ろす冥道。手には惨殺丸の首を落としたカタナを持っている。
幻術により、自分以外の誰かに見せかけていた。

「死ぬ直前、自分を殺そうとする者は誰だったか・・・見た本人にしか分からんのが残念だな」
冥道はそう言うと惨殺丸に背を向け、歩き出す。

「今日が惨殺丸の命日だ。」



「・・・上手くいったわね」
傷を負った左肩を手で押さえながら、去る冥道を物陰から見る影。

「にしても幻術返し・・・本当に覚えておいて助かったわ」
それは惨殺丸だった。彼女は左肩にカタナを受ける瞬間、幻術を冥道にかけていたのだった。
正確には、『かけられるところを跳ね返した』のだった。

「冥道、あなたは・・・久々利はもう忘れたようね。
 闇縫と久々利は御三家と並び称される前に長く争う時代があって、
 その時代を終わらせた理由は・・・『お互いに手の内を知り尽くして、勝負がつかなくなったから』と。
 久々利は闇縫の殺しの技術をすべて知り尽くした。そして、闇縫は久々利の幻術すべてを跳ね返す方法を得た。
 だからお互いに戦うのをやめた。そして後に天道家を加えて協調関係を築いた・・・歴史があるの」

満足そうに去る冥道。伝承通りなら幻術はしばらくすれば解けるはずだった。
惨殺丸を倒した、と思い込んでいる冥道だけを残して。

「あなたも・・・『私が一度地面に投げ捨てた鞘を、もう一度腰から取ろうとした』って矛盾に気が付けば
 違った結末だったのにね。使ったことなかったからミスしちゃったわ」

惨殺丸が描いた幻術での矛盾。しかしそれに冥道は気付くことはなかった。

「まあ幻術なんて返されたことなかったんでしょうけど・・・」

久々利は裏の仕事を廃業した。今や本家は久々利神社の跡取りとして、分家のものは占い師になるなどして
表の世界で活躍していた。裏の仕事の頃の歴史は、冥道すら知らぬ場所に封じられたか、完全に葬り去られたのだろう。

「まぁ、それでいいのよね。裏の仕事なんて、辞められるなら辞めた方がいいもの」

気が付くとシップ内の風は止んで、辺りは先ほどまで一騎打ちがされていた痕跡を全く感じさせない静けさとなっていた。

  • 最終更新:2015-09-13 20:40:49