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市街地から外れた工業地帯、その片隅に存在を消すかのようにその建物はあった。

非常連絡を受け、今の自分を受け入れてくれる仲間たちとの談笑を打ち切りそこへやって来た。
端末にこの建物のポイントが記されており『一人で来るように』とメッセージが添えられていた。

建物に入ると一人の女性が立っていた。

レティ:ご足労頂き誠にありがとう御座います、ティルト様。

ティルト:お主か?妾を此処へ来る様に端末で指示をよこしたのは・・・

レティ:はい、私はアークス事務員を勤めておりますレティ=メルリシアと申します。

ティルト:ふむ・・・その事務員が何の用があってこんな所に呼び出したのか?

レティ:ここは工務地帯専用病棟とされる医療機関です。この辺一帯の工業区での怪我人を収容する施設です。

ティルト:・・・とても医療機関とは思えん雰囲気だな・・・

人の気配もほとんど無く・・・深夜とはいえ館内の明かりは無いに等しい。
それとは別に異質な・・・不気味な気配をじてしまう。

レティ:・・・ここに意識不明の患者様が貴女の名前を呟いたと連絡を受け、来て頂きました。

ティルト:同名なだけで人違いもあるだろうに・・・ただ呟かれただけでわざわざ呼び出されるとは余程アークスは暇と思われとるのかな?

皮肉な笑みをレティに向ける

レティ:いえ、ティルト様は任務出撃数はそれなりの数値を記録しておりますので時間を持て余してるとは思っておりません。
    ティルト様は記憶喪失と記載がありましたので貴女にとって利のある話かもしれない、そう思ったのですが・・・

ティルト:ほぅ・・・事務員はアークス個人の情報をそれなりに持っておるのか?

ここまでの経緯を考えてもこのレティという女性は胡散臭い。
何か他の理由があってか・・・アノ願いに関わっているのか・・・

レティ:私の所属している部署は1人が1チームを重点的にバックアップするシステムを取っております。
    もちろん私以外、私の部署以外でもティルト様の所属チームを担当してる方はいますが・・・

ティルト:・・・今は信じておこうか。

レティ:ありがとう御座います。

歩きながら会話を続けていたレティの足が一室の入り口の前で止まる。
部屋の入り口には『ハミュー=ウェルパ』と表札がかけられていた。

レティ:この部屋の患者様です・・・私は外で待っておりますのでティルト様は中に入ってご確認の程よろしくお願いします。

やはり表札の名前に覚えは無い

ティルト:・・・わかった

意を決し、部屋に入る。
多くの医療器具が取り付けられた少女・・・いや少年がベットで寝ていた。
見るからに体の機能のほとんどを損傷しており生命力もかろうじて感じることが出来るほどの容態であった。

ティルト:・・・ただ死を待つだけの体ではないか・・・

起こして情報を聞き出すどころか今後話す機会すら得る事はできそうにないと判断できた。

ティルト:気の毒じゃが・・・妾がしてやれることは何も無いな。

そう呟いたとき自身の目から涙が零れ落ちた事に気が付く。
その時、『願い』へのピースが何か全て把握することが出来た。

ティルト:・・・なるほど・・・これがヤツに仕組まれた妾の願いというわけか。

そっと少年の額に手を乗せる。

ティルト:お主はこのまま死んだ方が幸せかもしれんが・・・すまぬな

部屋の隅には白い獣の赤い瞳が薄気味悪く光っていた。

ティルト:・・・貴様も悪趣味な願いの形を作ってくれたもんじゃな。

希望か絶望か・・・自身の願いを叶える為、ティルトは病室を後にした。

  • 最終更新:2015-09-15 01:50:59