5 Years After ~5年後のあなたへ~

(一部グロテスクな描写があります。ごめんなさい!)

某日/某時刻/某場所より

会話の中で、残雪丸が呟いた。

「・・・小さい頃、は・・・」
「大人になったら、大きくなったら・・・平気で人を傷つけたり、
 殺してしまったり・・・出来るようになると思ってたんですけど・・・」


その5年後・・・


'-------- 5 Years After ~5年後のあなたへ~ ---------------------------------------'


アークスのゲートエリア、その中央にある休憩所に一人の女性が座っていた。

肌は白く、肩まで伸びた黒い髪、
何より紫色の目が印象的だった。

「随分経っちゃったな・・・」

彼女は故郷を思い出していた、両親や兄弟のこと。
「でもまだ、一人前と認めてもらってないから・・・頑張らないと」

彼女は今アークスとして活動していた。
家業を継ぐことを認めてもらう為に周囲の反対を押し切り、アークスに入って研修を受け、
今は一人前のアークスとしていくつかの惑星の探索許可を持っている。

今日はそのアークスとしての仕事の為、もう一人のアークスを待っている。
一緒にナベリウスの森林エリアへ降りて仕事をする予定になっていたからだ。

「お待たせしました」

ふとみると、同年代に見える女性が彼女の方を向いて立っていた。
髪はやや灰色がかった黒に染められたショート、
彼女から見れば、比較的濃いめの化粧と青い口紅が特に目を引いた。

「どうも・・・同業者です。名前は・・・めんどくさいので言わないです。
 覚えなくて良いです、しね」
ぶっきらぼうに相手の女性は答えた。

「は、はい・・・わ、私は・・・・」
「あ、あなたも言わないでいいですよ。私、覚える気が無いので」
「そ、そうですか・・・」
「はい、苦手なんですよね。他人って・・・まぁどうでも良いですけど」

何だかやり辛い、と思いながらも彼女は生来の真面目さから真摯に話しかける。
「今日は・・・そ、その、よろしくお願いします」
「はい・・・短い間ですが」

こうして二人はナベリウスの地表に降りていった。

行動を共にして彼女が感じたのは
名を名乗らなかった女性の行動は異様ということだった。

身のこなしから実力は申し分ないと感じるけれど、
原生生物に対しての攻撃が苛烈、というより残虐だった。
もはや動こうともしないウーダンに対して何度もダガーを突き立てる。
肉を裂く鈍い音と内蔵に空気が入っているのか、妙な音が漏れてきた。

たまらず、彼女は声をかける。
「も、もういいんじゃないですか?もうそのウーダンは・・・」
すると相手は答える。
「えぇ、死んでそうですよね」
「いえ、死んでます」
「そうですか、二人でそう思ったなら・・・確証がとれました」

そして、思いがけない一言を言い放つ。
「念の為だったんですが、
 無駄なことをしてしまいました・・・どうでもいいですけど」

彼女は愕然として相手を見つめた。
どうしてそこまで冷酷でいられるのか?

でも、と彼女は思い直す。
自分が継ぎたかった家業も冷酷と言えば冷酷で、
その家業を継ぎたい為に彼女はアークスに来たのだから。

相手と自分、何が違うのだろう?
彼女には分からなかった。

「こうだと分かりやすくていいんですけどね・・・」
相手が呟く。彼女は意味が分からず、
「こう、ってどういう・・・ことですか・・・?」
答えるように相手は言い放つ。

「殺せば解決するって、簡単で分かりやすくないですか?
 ・・・どうでもいい、と言えばどうでもいいですけど」

追打ちのように、その言葉が突き刺さる。
自分の継ぎたい仕事、それも結局は人を殺すことではないか。
違う、と言いたかった、けれど何が違うのか、彼女には分からなかった。

心にもやがかかったまま、彼女は指定された区域の探索を続ける。



「こ、これで一通り・・・終わりました・・・ね?」
やがて区域の探索が終わり、彼女は相手に向かって話しかける。

「そうですね、すっかり日が暮れてしまいましたけど・・・」
気が付くと辺りは暗くなっていた。

結局、相手の女性の行動は理解できないままとなってしまった。
そして自分と相手の違いも分からないまま。

その答えはいつか見つかるのだろうか、彼女はそんな事を思っていた。


「では、最後の仕事に取り掛かるとします・・・」
「え・・・?」

彼女は振り向こうとした。その瞬間、自分の腹部に違和感を感じる。
彼女の腹部には日本刀が突き立てられていた。

日本刀が抜かれ血が噴き出る。
とっさに彼女は腹部を抑えるも、身体に力が入らない。
崩れ落ちるように倒れた。

倒れる寸前に身体を反転させ仰向けに倒れた
彼女の上に、すかさず相手は馬乗りになる。
既に致命傷を負っている彼女に抵抗する力は残っていない。

最後の力を出して彼女はもはや影にしか見えない相手に疑問を投げかける。
「ど、どうして・・・?」

それに対して影は
「暗殺を、依頼されたから・・・依頼主は・・・」
言いかけた瞬間にため息をついて
「もう、なんだっていいじゃないですか・・・どうせ死んじゃうんだし」
こともなげに言い放つ。

「あぁ、めんどくさい・・・」

そして影は手にした剣を振り下ろし、彼女の腹部めがけてメッタ刺しにする。

抜く度に飛び散る血、叫び声は徐々に弱くなり・・・聞こえなくなる頃には
辺り一面に血が飛散し、当の影ですら血まみれになっていた。

「ふぅ・・・終わりです」

影はようやく刺すことを止め、佇む。

紫色の印象的な目が「彼女だったもの」を見下ろす。
「エリナ・クラシカ・・・ターゲットに間違い、なし」

すこし間を置き、

「残雪丸、任務完了・・・」

そう呟き、残雪丸は闇の中へ消えていった。


  • 最終更新:2015-09-13 20:39:13