-Psychotherapy-

日も落ちて久しい時刻
遠くから花火の音が聞こえる緑地のベンチに2人の女性が座っていた
後姿はまるで大人と子供、大きな仕事を終えた二人が肩を並べて色取り取りの夜空を見上げていた

リディス:後はハミュー次第やけど・・・なごみの病気の件、解決してよかったな~
ミルラ:えぇ、難病ですからね・・・

ミルラの声掛けで研究への支援金、各部門の名医が集まり始まった「先天性フォトン漏出症候群」への治療考察

少ない臨床結果、論文等を手に皆が意見を出し合うもなかなか話は進まなかった
それでも一つ一つ、類似する論文から臨床結果と照らし合わせ完全寛解への治療法にたどり着いた

リディス:それにしてもすんごい人ばかり集めはったな~現場でこんなに頭使ったん久しぶりすぎて破裂するかと思ったわ
冗談っぽくミルラに投げかける

ミルラ:リディスもがんばってくれましたね、何人かの教授や先生は連れて帰りたいと評価してましたよ?

リディス:え~・・・そんなおべんちゃらいらんて!それにウチから頼んだことやし・・・そりゃ出来る事、精一杯がんばらんとなっ

ミルラの言葉に苦笑いを浮かべて返す

ミルラ:・・・リディス、そろそろこちらに戻ってきたらどうですか?

予想もしない言葉
フォトン医療によって過去、自分がどういう過ちを犯したか・・・
それを危惧してフォトン医療に異を唱えた本人からまさかの言葉であった

リディス:・・・それはきっついわ・・・ミルラはん知ってるやん、ウチが新医療を実践して患者を死なせてしまったこと・・・

それだけじゃない、その後も裏で何人も治療しようとし、その都度失敗してきた
新医療・・・フォトン医療プロジェクトをうちたてた組織によってだいたいのことは闇に放り投げられている
それでも真実を知り、自分を恨んでるアークスには何度も会ってきた

リディス:ウチにはもう医療に携わる事なんてできひんし、そもそもそんな力もなかってんて!アークスでチビチビやってるのが天職やったんやわ~

努めて明るく振舞うリディス
しかしミルラは話を続ける

ミルラ:貴方は才女でした・・・そんな貴方に嫉妬もしました、自分より半分も生きていない少女が成果ある臨床結果や論文を書いてるのですから

リディス:それは・・・そう出きるように造られたからで・・・そもそもミルラはんも当時から優秀な人材やったやんっ

ミルラ:他人の下す評価と自分が持つ評価は別です・・・貴方は自分でどう思っているんですか?

リディス:せやからウチにはそんな実力あらへんって・・・

ミルラ:では今回どうしてあそこまで真剣に取り組めましたか?聞くところによるとハミューという少年の手術もしたそうですね?

リディス:・・・それは・・・

ミルラ:誰にでも失敗はあります、そこから中々抜け出せない事、それは私にもありました

花火によって彩色された夜空を見上げるミルラ
医療の道は日進月歩、歩みを止める事はできない
それは遺伝子学でも同じこと

ミルラ:辛かったでしょう、重い荷物をここまで背負ってきたのでしょう?

夜空を見上げながらミルラは真剣な眼差しで言葉を続ける

ミルラ:当時私が異を唱えたのは治療そのものの危険性ももちろんですが・・・
    何よりまだ10年しか生きてない少女に命の重みを押し付ける大人達がいる事、私はこれに激しく怒りを覚えました

遺伝子操作されプロジェクトのために作り出されたデザイナーベビー
どうして自分なのか、あの治療で成功する手段なんてあったのか、この罪から逃れる方法はあったのか

どれだけ考えても、叫んでも、泣いても誰も助けてくれない
遺族や患者の友人には失敗による憎しみ・殺意を持たせ、医療仲間には関ると自分にも火飛びすると避けられる
そんな人生を送ってきた自分に過去一番傷つけてしまったであろう人からかけられた言葉
ただ呆然とミルラの言葉に耳を貸し、その小さな目からは大粒の涙が零れ落ちていた

ミルラ:今回の貴方の研究への姿勢を見て私はまだ貴方に・・・

言葉の途中、リディスが目を真っ赤にして泣いてることに気が付きそのまま口を閉じる
優しくリディスを抱き寄せそっと頭を撫でるミルラ
リディスもミルラに体を預け、花火が打ち終わるまで泣き続けた




花火も終り帰路に着く二人
リディスも泣き止んですっかりいつものリディスに戻っていた

ミルラ:ふふっ、空もリディスも落ち着きましたね

リディス:そりゃいつまでも泣いとられへんで・・・これでも今年で32やし!

ミルラ:・・・それも治療してみますか?遺伝子操作の弊害、私の研究が役に立つと思いますよ?

リディス:そんな世話かけること・・・それにもう今更やしこのままでええって!
     ・・・まぁそれよりミルラはんも困った事あったら、ウチでよければ力かすし・・・?

照れくさそうにミルラに返す

ミルラ:あら?それでは明日からたくさん困らないといけませんね?

悪戯っぽく・・・それで優しくリディスに微笑む
そんな時反対から手を繋いだ親子が二人の前を通っていく

ミルラ:・・・手をつなぎますか?

通り過ぎた親子を見送ったミルラが優しく微笑み手を差し出す

リディス:も~・・・子供扱いばっかりしてー!

苦情を言い放つもリディスは満面の笑みでその手を握った
後姿はまるで親子、繋いだ手には『絆』がしっかり握り締められていた


【中の人より】


  • 最終更新:2016-05-05 00:02:50