遠い僕

熱い
目が覚めた僕はそう思った。
温度とかではなくて僕自身がとても熱く感じた。
体調はすこぶる良い、良いのだが。
どこか、自分ではないような・・・そんな気がしてならない。
それでも自分はアークスである限り任務をこなさないと行けない。
部屋を出る時シェルの声が聞こえた気がしたけど気にしなかった。

僕は急ぐんだ、この呪いを解かないといけない。
約束の為に。

ノルマを済ませてロビーでのんびりしているとチームの回線から声が聞こえた。リティだ。
少しだけ気分が高揚する、誰かと話す事は嫌いじゃなくなったから。
挨拶を済ませるとリティに任務に行かないかと言われた。
嬉しいようななんというかくすぐったい気持ちになったけど不安もあった。自分の体調が良すぎる事だ。
それを伝えるも行こうと言われ乗ってしまった。

僕は後悔する。
断っていればこうはならなかったのに、と。

探索先は黒の領域。
どうやらリティは黒の民討伐任務を受けていたみたいだったようでダーカーに対して毒を吐いてた。
それだけじゃないとは思うけど、僕には分からない。
暫く戦ってるといろんな事が起きる。
真っ暗な視界、風の壁、バトルスタジアムみたいな電気の柱、飽きないけど疲れる場所だと思った。
リティと居ると楽しい、そう思えたのに奴は現れた。
ファルス・ヒューナル。
ここ数日僕はヒューナルを見ていた。その数、6回。
殆ど負けているしヒルダさん達に止められて探索を中断してる。
それでも辞められない。
何故かあれを見てると自分の奥底からザワザワした何かが込み上げてくるんだ。
タトゥーが熱を持つ。
あれを殺せと僕に囁いてくる。
いろんな人に聞いた、距離をとって安全を確保して戦うんだ、と。
最初はそう思ってた。
ヒューナルがリティを吹き飛ばすまでは。
視界が狭まりヒューナルしか見えなくなる。

許さない
赦さない
ユルサナイ
僕の大切な人を傷付ける奴は
僕が壊す

何度倒れたか覚えてない。
リティも相当倒れてた。
ムーンもいっぱい使った気がする。
頭がボーッとする。
リティと会話してたけど何を言ってたのかよく覚えてない。
ヒューナルと交戦回数かな・・・それは言った。多分。
でも、なんだか頭が回らない・・・ボーッとするんだ。
怖い気がする、でも体が熱い。
動かして冷まそう、蜘蛛倒さないと。
逃げて・・・
そう言ったのは僕?
なぜ逃げるの?意味がないのに。

蜘蛛を倒した。
やっぱり僕には難しい相手だった。
激戦だから辛かったかな、でも楽しかった。
お腹が空いた。
変な空腹感が僕を苛む。
やばいと思った、だからリティに言った。
居なくなって、と。
でも僕はこれ以上口を動かせなかった。
言わなきゃいけなかったのに。
僕が「力」に呑まれる前にって。

いきなり僕を襲ったのは脱力感で僕が僕の視界を傍観してるような感覚に襲われた。
誰?僕の声で喋るのは。
誰?僕の体で動くのは。
やめて、やめて、やめてよ。
僕は守る為に力を得たんだ。
リティを傷付ける為に力を得たんじゃない。
お願い、返して。僕の体を返して。
肩に走る激痛。
リティは僕に対して発砲したのだ。
スタン弾でも、銃は本物。
衝撃が体を突き抜ける。
なのに体は止まらない。
止まってよ、止まってってば!
インガを返して!それはリティを斬るものじゃない!
ブルートを返して!それはリティを殴るものじゃないんだ!
エンブを返してよ!
全部仕事に使うんだ!
人を傷付ける物じゃないんだ!!
遠くに聞こえるリティの声。
体には絶えず弾丸の痛みが走る。
スタン弾だからなのか僕は止まらない。

僕の口が動きリティに楽しいかと聞いた。
リティに聞くな、楽しい訳ないだろ!
lity:面白いわけないでしょう!?
lity:バカじゃないの!?
ほら、そう言ってる。
シャーム:僕は・・・最高二ィィ
タノシイイイイサアアア!
おぞましい声、それは僕の声だ。
やめてよ、そんな声を・・・
リティに聞かせないで・・・

体の痛みが絶えることはない。
けどついに僕は膝をついた。
今のうちに逃げて欲しかった。
なのに
僕はリティに向け手を伸ばし助けを求めた。
わざと泣いて、わざと血を吐いて、僕の声を使って。
リティが駆け寄ってくる。
だめ、来ないで。
僕の願いは届かない。
僕の拳はリティの首を捉えそして殴り倒した。
咳き込むリティを見下ろす自分。
無力に苛まれ僕は絶望した。
あぁ・・・なんで僕は・・

生まれてきちゃったの・・・?

あとは殆ど覚えていない。

体中に感じた焼けるような熱は恐らくリティが実弾を放ったダメージ。

それでも止まらない僕。

お願い

僕を

殺して




突如世界が鮮明に映る。
そしてリティに思い切り首を掴まれてる。
かなり締まってる。
止めようと腕を動かす。
両腕とも明後日の方を向いてる。
折れているのだろうか。
なんで?
lity:戻ったんだ・・・
lity:ごめん、ちょっと手荒にした
手荒どころじゃないんじゃ・・・
そう思ったが僕はそれどころじゃなかった。
リティが心配で心配でしょうがなかった。
怪我はしてない?
無理してない?
そう思って手を動かした直後
身体が固まった。
聞こえてくるのは古い知り合いの声。
どうやらリティの端末をジャックしたようだった。
淡々と話すふざけた口調はまさに嫌な女、フラッシュの声だった。
どうやら僕は父さんの遺した研究所に転送されるらしい。
怖い
嫌だ
リティに頑張って手を伸ばす。
怖い・・・よ・・・
リティは僕の手を取ってくれた。
視界が光に呑まれていく。
リティの体温が心地良い。
その瞬間、僕は暗転した。


目が覚めると僕の怪我は無くなっていた。
何故かは知らないけど。
急いで研究所の実験室に戻るとリティがいた。
安心したのも束の間
リティが膝から崩れた。
無理をしたらしい。
何かよく分からない何かを使ったらしい。
そんな苦しそうなのにリティは僕に言う。
抱え過ぎだと。
自分達は大丈夫だからと。
あぁ・・・ありがとう。
それだけで僕は

救われた気がする。


僕の熱は、少しだけ晴れた気がした。





研究所の近くのスラムで女は呟く。
?:やれやれ…フェーズ1は無事クリアっと…どう転ぶか楽しみだ…
手にコインを弄びながら妖しく笑う
?:これだから賭けとこいつはやめらんねぇ…
もう片手に持つ端末に映るのはシャームのデータだった。






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トラウムです。
題名に合わせてシャームのその日を記載しました。
シャームの持つ力をテーマに行いました。
力とは諸刃なのだとやってて思いました。
シャームのここからの成長を見ていきたいですね
グリムさん、お付き合いありがとうございます!
クエストに誘われたのでつい起こしてしまいました…面目ないです…
次回はもうちょっと計画的に行いたいですね…
反省を踏まえつつ計画したいと思います。
もう少し、お付き合いの方お願いします。
では、また。

  • 最終更新:2015-09-13 23:24:21