残雪丸st0「プロローグ」

アークスシップ内は、暗くどんよりとした空が包んでいた。
空調設備の故障のせいらしい。

そのシップ内のある建物の一室、少女がカーペットの上に座り込んでいた。

彼女の部屋の向かいには姉の部屋があった。物心つく前に家を出たため、いることすら知らなかった姉。

その姉と話す度、彼女の悩みは深まっていく。

少女には兄がいた。少女とは違い、才能にあふれた兄。
その兄に対して、少女は一時期激しく嫉妬した。同じ親から生まれたのに。と。
もし少女の目が一族血統の証である紫色の瞳以外であったら、本当に自分は拾われた子か何かであったと信じていたに違いなかった。

そして、姉はその兄を遥かに上回る才能を持っていた。
しかし、今は家業をやめていた。なぜ?少女には理解しがたかった。

自分が欲しくてたまらない才能を持っているのに、と。

気付けばシップ内は雨のような天気になっていた。おそらく水分を多く含んだ空気がたまってしまったのだろう。

「やっぱり…」

少女はお面を手に取る。自分の内気さ、ダメな性格をすべて隠して、理想の自分になれるような気がする、お面。


「お面は必要…」

少女は手に取ったお面を被る。

お面の奥には、暗殺者一族である闇縫家の血を引く証である、紫色の瞳が覗いていた。




雨のような天気になったシップ内の街を一人のアークスが歩いている。

「・・・こんな天気になる機能、シップにあったっけ」

多くの人が濡れないよう、建物の中に逃げるなか、
そのアークスはひとり、雨に打たれて濡れていることに関心がないように歩く。

「ま、どうでもいいけど・・・」

雨のせいか、その紫色の瞳は酷く濁って見えた。

  • 最終更新:2015-11-01 10:54:11