ロウフルst3 過去と決意

それは、お嬢と二人きりで走破演習に行けると浮かれていたときだった。

突然の轟音と衝撃がキャンプシップを襲う
オペレータが異常事態を察知し、現場を報告している。
おいおい、墜落とか勘弁して欲しいとこなんだがな・・・

そんなことを考えていると揺れが収まる。うまいこと不時着できたようだ。
とりあえず状況を確認するためにシップの外に出てみた。

「ここは・・・」

そこに広がる光景は赤く禍々しいフォトンで覆われた空間だった

その光景を見た瞬間、不意にノイズのようなものが走る・・・
――――――――――――――――――――――――――

『おい、全員無事か?・・・といっても、こんな場所じゃ無事でもかわらねぇか』

『ここは・・・一体どこなんでしょうかー』

『・・・わかりませんが、危険な場所だということは確かですね』

『そんなもん見たらわかるさ、でもって先に進まねぇといけねぇってこともな・・・』

『そうですね・・・行きましょう』

――――――――――――――――――――――――――
「そうだ、俺は知ってる、この光景を・・・」

「以前にも同じようなことが?」

お嬢の問いかけで我にかえる。そうだ、ここにいるのは俺だけではない
だったらやるべきことは決まっている。

「・・・いや、なんでもない。とりあえず脱出するか、こんなとこ早いとこ退散したいしな。」

「・・・そうですね、そうしましょうー」

そして俺たちはここから脱出するため、指定されたポイントへと移動を始めた。

さっきのノイズが気になるが、今重要なのはここから脱出することだ
せめて、お嬢だけでも・・・


・・・・・


道中は多数のダーカーを相手に苦戦を強いられながらもなんとか進んで行った。
お嬢の支援がなければ今頃はそこら辺でくたばっていただろう・・・

そして、ダークラグネを倒し、次のエリアに移動しようとした時だった。

(・・・なんだ、さっきからノイズが)
――――――――――――――――――――――――――

『あ、ありがとうございます・・・』

『あれぐらいのフォローなら朝飯前だ、だからもっと頼ってくれてもいいぜ?』

『・・・やっぱり私、足を引っ張ってるんじゃ』

『そんなことはないですよ、あなたのことは・・・』

――――――――――――――――――――――――――
「頼りにしてるぜ、イリア・・・・あれ?」

「イリア?ロウフルさん、もしかして記憶が・・・?」

突然ノイズが消え、現実に引き戻される。
そして目の前にいるのは青い長髪の少女ではなく、見慣れた緑色の女性の姿だった。

「・・・かもしれないな」

そして先ほどの少女のことを思いだそうとしたが思い出せない。
少なくとも、C小隊に入ってからあの少女には一度も会っていないはずだ。
だったら彼女は一体・・・

「とにかく、長居は危険です、先を急ぎましょう。」

そんな俺を心配して声をかけてくれる。確かに考え込んでる時間はなさそうだ・・・

「そうだな、急いで出ていかないと、だな」


・・・・・


その後戦闘は激しさを増し、何度か倒れる場面もあったが
互いにフォローし合いようやく指定されたポイントの近くまで到着することができた。しかし

「・・・くっ」

転送装置に向かおうとしたが、突然身体から力が抜け膝をついてしまう。
この先には行ってはならないと身体が警告するかのように・・・

「大丈夫ですか?どこか怪我を?」

そんな俺を心配してお嬢が声をかけてくれる。
そんな彼女をこれ以上心配させまいと自分自身を激励叱咤し、なんとか立ち上がる。

「・・・あぁ、大丈夫だ、大丈夫」

「回収ポイントまでもう少しのはずですから、がんばりましょうー」

「そうだ、あと少し・・・あと少しだよな。励ましてくれてありがとな」

俺はお嬢と共に転送装置に乗り回収ポイントへと転送される。
しかしそこにあったのはキャンプシップに繋がるテレパイプではなく・・・

「これは!?」

「・・・俺?」

人型の大型エネミーであるファルスヒューナルと・・・
自分とお嬢の姿をした模倣体が待ち構えていた。

それらを目撃した瞬間、記憶がフラッシュバックする・・・
あぁ、思い出した、俺はここで仲間を失ってたんだな、自分が不甲斐ないばっかりに・・・

今だってそうだ、自分の模倣体は問題なく斬れるのに、お嬢の模倣体には手加減をしてしまう
偽物だと分かっているのに・・・

そして、そんな奴が戦闘してたらどうなるかなんて容易に想像できる。

「しまっ!?」

手元が狂い斬撃が逸れる、その隙をつかれ模倣体の放ったテクニックが直撃し、俺は倒れた・・・

「ロウフルさん!くっ・・・」

俺が倒れるのを見てすかさずフォローに入ろう回ろうとするお嬢
しかし敵の猛攻で追い込まれてしまいそれどころではなくなっている

あぁ、俺はまた失っちまうのか、大切な仲間を・・・・・
嫌だ・・・あの光景はもう見たくはない、だから・・・!

「うごけえええぇぇぇぇぇ!」

迷いを断ち切り、気力を振り絞るための咆哮、その声に気がつき模倣体達がこちらに来る。
うまく戦力を分断することができた、これでイオリもなんとかなるだろう

模倣体が射程内にはいった瞬間、カンランキキョウを放つ、ためらいなく刀を振り抜き続ける。
ただひたすらに一閃を放ち続け、ようやく自分のクローンが倒れる。
そしてもう一体・・・イオリの模倣体にはカタナコンバットによる斬撃を浴びせる

そうだ、こいつはニセモノダ・・・情けはイラナイ

身体の芯が熱くなるのを感じながら、コンバットフィニッシュでイオリの模倣体を倒すが・・・
やはりニセモノでもイオリが倒れるところを見ると胸が締め付けられるように痛む
だが、今はそんなことをきにしてはいられない、イオリは頑張って大物を引き受けてくれている
一刻も早く助けにいかなければ・・・


・・・


その後、なんとかイオリと合流し、ファルスヒューナルを退けることができた。
それと同時にジャミングが解除され、目の前にテレパイプが現れる。

戦闘が終わり、昂ぶっていた精神が徐々に落ち着いていき、様々な記憶が蘇る・・・

「そうだ・・・思い出した・・・すまない、すまないみんな、いままで忘れてて、ごめんな」

「昔のこと、思い出したんですね?」

「あぁ、断片的には、だがな・・・」

そう、断片的にではあるが、C小隊に入る前の記憶を思い出すことができる。
楽しかった記憶も、辛いできごとも全て・・・

「・・・詳しいお話を聞きたいところですけど、まずは脱出しましょうかー
 さっきのが戻ってきても困りますしー」

「・・・・そうだな、早く帰るとしよう」

イオリを先にテレパイプで転送させ、一人になったのを確認してから呟く・・・

「・・・・悪いな、俺には帰る場所があるし守りたい仲間もいる
 そっち側には・・・まだいけそうにない」

苦楽を共にし、戦ってきた戦友たちに向けて・・・別れの言葉を

「だから・・・さよらならだ、みんな・・・」

そして俺もテレパイプに乗り、キャンプシップへと転送される。
帰るべき場所へと帰るために・・・


・・・・・


「・・・・ブハァ~つっかれたー」

「けっこうハードでしたねー」

「けっこうハードじゃすまないだろ今回は・・・」

そんなことをいいながら地面に座り込む
冗談をいう余裕はできたが身体の方はそうもいかないようだ・・・

「それより、お嬢は大丈夫なのかよ。今回は色々大変だったが・・・」

「ちょっとだけ・・・いえ、だいぶ疲れちゃいましたねー」

「そりゃあんなとこに放り込まれたら普通ヘトヘトになるよなー」

そんな感じでだべっていたら、いきなりイオリが真面目な表情でこっちに向き直る

「ん?どうした?急にかしこまって・・・」

「・・・一人だったらあそこで死んでしまったかもしれません、
 一緒に来てくれてありがとうございます」

「・・・・・ハハッ、そりゃこっちのセリフだよ。たぶん俺一人だったら
 あそこで彷徨ってくたばってただろうからな」

嘘ではない。多分俺一人であそこに行ってたら
ノイズの正体を探ろうとして彷徨っていただろうからな・・・

お話はこれで終わりかとおもったが、イオリは真面目な雰囲気を纏っている
どうやらまだなにかあるようだ

「ロウフルさん、過去のこと、話していただけませんか?
 話したくないことなら、無理に聞こうとは思いませんが・・・」

どうやら、俺の過去が気になっているみたいだ。
こっちもまだ混乱しているし、記憶の整理も兼ねてイオリに過去の話をすることにした・・・

「今回はお嬢・・・いや、イオリに助けられたんた、
 それぐらいならお安い御用なんだが・・・どっから話すべきかねぇ」

そして俺は記憶の断片をつなぎ合わせるように思い出したことを語る。

俺がアークス研修生だったときのこと、同僚とバカをやった楽しく過ごしたひと時
そしてアークスになったあの日、あの場所で仲間を失ったこと

「・・・仲間が、いたのですね?」

「あぁ、みんないいやつばかりだった、俺なんかを庇ってしまうぐらいのお人好しだったよ」

「・・・・・」

「全く、いいやつほど早死するっていうけど、まさにそれだよな・・・」

本当にあいつらはお人好しすぎる。
最後までこんな俺を見捨てることをしなかったぐらいだから相当なものだ・・・

「それならロウフルさんも気をつけないといけませんねー、周りがしっかり見張らないとー」

「え?なぜに?」

「だってロウフルさんは仲間が大好きな、おせっかいのお人好しですからー」

「俺が?いやいや・・・」

なぜか知らないがえらく過大評価されてしまっている。

「俺はただ、仲間を失いたくないって思って行動してるだけだよ・・・
 それに俺はそこまでできた人間ではないんだがな」

「そんなことありませんよー、だってロウフルさんは困ってる人を放っておけない人ですし
 それに・・・本当にそう思っていたのなら、新しい仲間なんて作ろうとしませんよ、
 たとえそれが無意識であっても、ですよー」

どうやらイオリにはそう見えてるらしい。
だが言われてみれば確かに俺は仲間のために行動し続けていたような気がする。
それも世話を焼きすぎてるぐらいに・・・

「・・・・・なるほどねぇ、そういうんだったらそうなんだろうな
それに、俺はなんだかんだいってみんなと絡むのも、誰かを助けるのも好きだからな」

記憶があってもなくても、『俺』という人間の本質はかわらないようだ
俺が記憶に執着しなかったのは、それを無意識の内に理解していたからなのもしれない。

「さあ、お話はここまでにして残ってるお仕事を片付けましょう
 私たちを模したダーカーが作られたことを、皆さんに報告しなくちゃー」

もう十分休憩できたのか、イオリが元気良く立ち上がる。
思うのだが、最近の女性は逞しすぎるような気がする。

「えらくタフだなー」

「任務にはもう出ませんよー、さすがに体力が限界ですー」

「さすがにそうだよなー・・・でもまぁ、こうやって無事に生きて帰って来れたんだ
 それだけでも十分だな」

そう、無事に二人揃って帰って来れたんだ、今はその事を喜んどくべきだ

「そうですねー、ではロビーに戻りましょうー、シップに戻るまでが任務ですからねー」

「そうだな・・・あぁ、帰るか」

そして、キャンプシップの出口を開けた時だった。

「ありがとうイオリ、無事に生き残ってくれて」

不意に彼女への感謝の呟きがこぼれた・・・しかも普段出さないような優しい声で。

いやいやいやいや、俺そんなキャラじゃないだろ!

「なにか言いましたか?」

しかし運がいい事に聞こえてなかったようだ、だったら好都合た。
俺はいつもの調子でこう言った

「いや・・・汗かいてるお嬢もなかなかにセクシーだなーって、ハッ!」

「そうですかー、ナ・メギドでふっ飛ばしてほしいのですねー」

「勘弁してくれ!お嬢のクローンにやられまくって威力は身にしみてわかってるから!」

そういって俺は逃げるようにロビーへと駆け込む。もう仲間を失わないという決意を胸に・・・



【中の人より】


  • 最終更新:2015-09-15 23:48:41