チカラがあるからできること

『惑星リリーパ地下坑道より、詳細不明の救難信号が発せられていることがわかった。
 遺留品の誤作動と思われるが、放置しておくわけにもいかない。
 アークス各員は、地下坑道へと赴き、救難信号の発信源付近を探れ』


【惑星リリーパ地下坑道 第2エリア――】

救難信号調査の任務を受け、ロウフルとEstrella、そしてミリエッタは、惑星リリーパ地下坑道へと降り立っていた。
襲い来る機甲種たちを退けながら、複雑に入り組んだ道を急ぐ3人。
第2エリアを彷徨う一行は、その広大な地下空間に圧倒されつつあった。

Estrella「迷路みたいでヤダ…」
ミリエッタ「広い~…」
ロウフル「よくあるこったな」

疲労の色を滲ませるEstrellaとミリエッタ。
体力的にはまだ余裕のあるロウフルも、うんざりした様子だ。

スパイクピラーのトラップを動作させないよう、センサーの合間を縫ってベルトコンベアの通路を渡る。
うず高く積み上げられたコンテナを足場にして、高台へとよじ登る。
縦横無尽に走る幾つもの通路を抜け、3人はようやく第2エリアの出口へと辿り着いた。


ミリエッタ「ふぅ、やっとですね……」

肩で息をしながら、端末のオートマッピング機能を起動するミリエッタ。
この複雑な迷宮は、一体どんな形をしていたのか。
それを確認してやろうと、端末を覗き込んだ彼女の表情が、不意に曇る。

ミリエッタ「あ、あれ、もしかして…?」
ロウフル「もしかして?」

端末が映し出した、第2エリアの構造。
それは、エリア入口の北西ブロックと、現在地……即ち出口である北端ブロックが、短い通路で繋がっており。
エリアの大半を占める複雑な迷路――3人が抜けてきた道は、大きな大きな迂回路となっていた。

ミリエッタ「実は物凄く遠回りしました?私達…」
Estrella「…しー」
ロウフル「ハハ…まぁよくあることさ」


【惑星リリーパ地下坑道 第3エリア――】

ミリエッタ「…だいぶ、奥まで来ましたね…」
Estrella「救難反応はこのエリアみたいだね…」

とんだ回り道をしながらも、どうにか第3エリアへと到達した3人。
Estrellaが現在地と救難信号の位置情報を照合し、目的地に近づいてきた事を確認する。
奥へと続く道を駆け出すロウフルとEstrella。
だが、ミリエッタは突然その場に座り込み、俯いてしまった。

ミリエッタ「…っ…ご、ごめんなさい、少し、気分が…」

進もうとしていた2人は慌てて足を止め、ミリエッタの元へと走り寄る。

ロウフル「おいおい大丈夫か?」
Estrella「大丈夫…?」

呼び掛けるロウフルとEstrellaに、顔を上げるミリエッタ。

ミリエッタ「ここのフォトンとの相性が、あまり良くないみたい…。
      少し休めば、大丈夫だと思います…」

その顔色が青白く見えたのは、光の加減のせいだけではないようだ。
周囲のフォトンの影響を受けやすいミリエッタは、陰鬱で生命の気配が希薄な地下坑道の空気に当てられてしまったらしい。
座り込んだまま目を閉じて、深呼吸を数回。
暫くして気持ちを落ち着けたミリエッタは、ゆっくりと立ち上がった。

ミリエッタ「すみません…もう、大丈夫…」
ロウフル「そっか、無理はするんじゃないぞ?」

覚束ない足元にやや不安は残るが、その顔色は先程より良くなったようだ。

Estrella「…辛くなったら、ロウに抱っこしてもらおう…」
ロウフル「ハッハッハ、いつでも大歓迎だぜー」

ミリエッタの回復に安心したのか、冗談を飛ばすEstrellaと、その冗談に完全に乗り気なロウフル。

ミリエッタ「だ、大丈夫ですからっ!自分で、歩けます…!」

ミリエッタは顔を赤らめて、第3エリアの奥へと駆けていく。

ロウフル「おーおー赤くなって…かわいいねぇ」

ロウフルとEstrellaも、笑いながらその後を追った。


【第3エリア 奥部――】

第3エリアの探索も順調に進み、一行はいよいよ最深部へと到達しようとしていた。
救難信号の発信源は、この先にあるはずだが……

「りーーっ!!」

静まり返った地下坑道に、突然甲高い叫び声が響き渡る。
声の方向を見ると、半壊したギルナスの上半身……ギルナスアームに捕まったリリーパ族と、彼を助け出そうと必死にその腕を引っ張るもう1匹のリリーパ族の姿があった。
そして、リリーパ族の声を聞きつけた、多数の機甲種たちの姿も。

ミリエッタ「え、ええとっ!こんな時は…!」

ギルナスアームを下手に刺激してしまうと、爆発の危険がある。
リリーパ族が自力でギルナスアームから脱出するまで、機甲種から彼らを守る。
この状況では、それが最善の選択だろう。
3人はリリーパ族をその背に庇うように陣形を組み、迫り来る敵を迎え撃つ。

ロウフル「行くぜっ!」
Estrella「負けないんだからっ」

ロウフルとEstrellaが、それぞれの武器を手に、眼前の機甲種へと走り出す。
ミリエッタも遅れまいと、手にした導具から1枚のカードを取り出した。

ミリエッタ「お願い、力を貸して!」

ミリエッタの呼び掛けに応えるように、膨大なフォトンがカードを持つ彼女の右手へと集う。
そのフォトンを意思の力で練り上げ、紡ぎ、一筋の眩い雷と化して目の前の機甲種に叩きつける。
直撃を受けた機甲種は一撃で黒焦げとなり、その動作を停止した。
研修生とは思えないほどの、強力なテクニック。
未熟なフォトン操作技術を補って余りある、絶大なフォトン感応力。
それこそが、彼女の最大の武器だった。

ミリエッタ(大丈夫…このチカラがあれば、この子たちを守れる…!)



「り~~♪」

程なくして背後から聞こえた声に振り向くと、リリーパ族は無事にギルナスアームの腕から脱出していた。
嬉しそうに2匹連れ添って、壁際へと駆けて行く。
周囲に溢れ返っていた機甲種も、3人の活躍によって大半がスクラップと化し、残ったものは地下坑道の奥へと逃げ帰っていった。

ミリエッタ「よかった、うまく行きました!」

そして、エネルギー切れを起こしたのか、動作を停止したギルナスアームの傍らの床には。
赤いランプが明滅を繰り返す、小さな箱状の機械が落ちていた。

Estrella「通信機…?これ、救難信号を発信してる…」

拾い上げたEstrellaがその正体を確認し、スイッチをOFFにする。
以前この地を訪れたアークスが、落としたものだろうか。
リリーパ族は、機甲種のジャンクパーツなどを収集する習性を持つ。
この通信機も先程の彼らが回収し、持ち歩いていたのかもしれない。

ミリエッタ「ギルナスの腕から逃げようとしてる間に落として、偶然救難信号のスイッチが入ったのかな…?」
Estrella「だとしたら…あの子達、凄い幸運だね…」
ロウフル「そうだな。ま、救難信号の謎も解けたし、これで任務完了だ。おつかれさん」


【キャンプシップ内――】

キャンプシップへと帰還した3人は、本部への簡単な報告を済ませ、アークスシップへの岐路に就いていた。
一仕事終えた心地良い疲労感の中、ミリエッタが口を開く。

ミリエッタ「それにしてもよかった…今回の任務、救援要請っていうから、責任重大で不安だったんです。
      でも、ちゃんとできました」
Estrella「うんうん…、コフィーさんに怒られずに済むね…」
ロウフル「だな」

緊張から解き放たれた安堵感からか、次々と言葉が口を突いて飛び出してきた。
これまで誰にも言えず、抱え込んでいた事までも。

ミリエッタ「私、こんな体質だし…
      フォトンなんか感じられない方がいいんじゃないか、とか…
      アークスに向いてないんじゃないかって思うこと、よくあるんです…」

今回もそうであったように、フォトンの影響で度々体調を崩し、周囲に迷惑を掛けてしまう事。
強過ぎるフォトン感応力……それは彼女にとって、大きな悩みの種だった。
だけど、今日。
その力のおかげで、小さな命を2つ、守ることができた。

ミリエッタ「でも…このチカラがあるから、出来ることもあるんですよね…」

自分の手を見つめながら、ぽつりと呟くミリエッタ。
その顔には、少しだけ誇らしげな笑みが浮かんでいた。

ロウフル「そうそう、前向きに考えておきな。前向きになっときゃきっといいことあるはずだぜ!」
Estrella「うん…、大変だろうけど…だからこそ、みりたんは凄く上手にテクニック使える…。私だと、絶対できないもん」

2人の後押しを受け、その自信は強固なものへと変わっていく。

ミリエッタ「私、アークスを目指して頑張ります。今回の事で、頑張れそうな気がしてきました!
      ロウフルさん、レアさん…ありがとうございましたっ」

進むべき道を示してくれた先輩たちに、彼女は満面の笑みで感謝を告げた。


乗り越えなければならない苦難は、まだまだ沢山あるだろう。
それでも少女は、自らの力を受け入れて歩んでいく。
確かな足掛かりを、1つ1つ手に入れながら。



【オマケ】



【中の人より】


  • 最終更新:2015-09-14 01:06:37