イオリst1「弟」

ロウフル「いやいや、告白したって玉砕するだけだろ?」
かすみ「ふうん、する相手はいるんだー?」



チームルームでのおしゃべり。
何気ない会話から、ロウフルさんの告白の話(?)になっていた。



ロウフル「いやいやこんな軽い男の相手なんていないでしょうよ」
アネモネ「あまり自分を悪く言うものではありませんよ」
かすみ「そうよ、好きになってくれる人にも悪いじゃない?」



自嘲気味なロウフルさんのことばに、反駁する声ふたつ。
確かにロウフルさんはちょっとえっちな感じだけど、女性を裏切った、みたいなことは聞かないし、そういうイヤな感じはしないもの。



ロウフル「けどまぁ、事実なんだから仕方ないんだよなー。自然と女性の胸部に目線がいったりとか・・・な」
かすみ「んー・・・それって男の人なら普通なんじゃないかしら?分からないけど」
ミリエッタ「そーゆートコもまとめて受け止めてくれる人ならだいじょーぶですよっ。それに~、好きな人になら、見られたって平気ですよね~」



肯定的な意見がふたつ。
でも、私はちょっと違う。



イオリ「仕方のないことかもしれませんけど、あんまりあからさまなのはちょっと、って感じしちゃいますよねー」



男の子ってそういうものなのかもしれないけど、でもやっぱりTPOはわきまえていてほしいかな。
言ってから、ああ、こんなんだからいまだに恋愛経験もないのかな、なんて思ってしまう。
相手のあるがままを受け入れられない、私はまだまだ子どもなのかもしれない。



ルーク「ロウフルにはイオリの様なタイプが似合ってると思うんだが」



その一言に、私は思わずぎくりとしてしまった。
あんまりうれしくない流れ。

恋愛の話は好きだし、男性に興味がないわけでもないのだけれど、苦手なのだ。自分がそういうことをするのは。
この年になってもいまだ恋人ができたことはなく、私の恋愛経験といえば部活の後輩に告白されたりアタックされたりしたことくらい。

運動系の部活に異性の後輩などいるはずもなく、当然ながら同性の、である。



イオリ「うーん、私の好みからは外れちゃうかなー、残念ですけどー」



早々に、この話題の舞台から降ります宣言。
きっといつものように、ロウフルさんが残念そうなリアクションを取って、次の話題へと変わっていくはず。

そう思っていたのに。



(ど、どうしてそんなにダメージ受けてるの!?)



ロウフル「ま、まぁそうだよなー」



ロウフルさんの口から出るのは、いつもどおりのことば。
でも、その前に一瞬間があった。

そのショックは何?
単純に自分を恋愛対象として見てくれる女の子が減ったから?
それとも・・・



ルーク「まあ待て。意外とイオリは頑張る男の姿に弱そうだぞ?」



ルークさんがフォローしてくれたけど、その発言はどうなんでしょう。

もともと、年下の男性ってあんまり恋愛対象にならない。
頼りになる、年上の男性のほうがタイプかなと思っていたのだけれど。



ロウフル「努力する男性か・・・そういや自分のためにってのはそんなにやったことないなー。って、そういえばリサとオーザから面倒なこと頼まれてたな・・・今度そっち方面で頑張ってみるかな」



ロウフルさんのことばに戸惑ってしまう。

どういう意味なの?
私の好みの男性(会話の流れでそういうことになってるだけだけど)を目指してみるって、私に気があるってこと?
私が、本命の相手、なの・・・?

出会った頃には、私と同じくらいだった目線を「見上げる」。
急激に背が伸びた彼は、顔つきまでも男らしくなったような印象。

憎からず思っているとはいえ、弟のような存在だったのに。
異性に好意を持たれているかもしれない、ということが、これほどまでに早鐘を打たせるものだなんて初めて知った。
そしてそれが私を舞い上がらせ、一種の酩酊状態へといざなう。



イオリ「頼れる男になったら好きになっちゃうかもしれませんよー?」



普段の精神状態では、きっと言えなかったことば。
臆病な私の、精一杯の踏み込み。

まだきっと、恋をしたわけじゃない。
そのひとつかふたつ前の段階。
だけど、「弟」が「恋愛対象候補」に変わった・・・のかもしれない。

でも、言ってしまったら急に頭が冷静になって、なんだかすべてが、過剰な自意識が作り上げた妄想なのではと思い始めてしまう。



イオリ「まあ、私の好みよりもその本命の子の好みのほうが重要だと思いますけどねー」



だから、ずるい私は、ここで舞台から降ります。

「もし、もしもあなたが、私に舞台に上がってほしいと思っているのなら、決して間違うことのない、はっきりとしたことばで引っ張りあげてください」
「そうでないなら、そっとしておいてください」

そんなことばを、あなたに残して。

  • 最終更新:2015-09-15 00:57:01