かすみst6「きおく」

暗い一室に、人が集まっていた。
申し訳程度の照明が辛うじて人を認識できる程度の明かりを生んでいる。

「なんだ、また死神は居ないのか」
誰かが声を発する。部屋はそこそこに広く、真ん中に大きな丸いテーブルがあり、囲うようにイスが並んでいた。

「はは、仕方ないさ。奴がいないのはいつものことだからな」
明るい声が聞こえる。

「ふん・・・、『機忌鬼のからくり丸』は相変わらず間が抜けてやがる」
そう返す声の主。

「なんだ、『激震の王牙』くんは機嫌が悪いようだな」
からくり丸と呼ばれた男性は、さらに声の口調を変えずに返答する。
『激震の王牙』と呼ばれた男性は言い返すのをやめ、そっぽを向く。

「くだらない・・・ダーリンといる時間を割いて来てるんだから、早く始めなさいよ」
二人のやりとりを見ながら突き放す言い方をする少女。イスにちょこんと座った、可愛らしい姿とは裏腹だった。

「そう怒らない怒らない、『妖艶なる依林(イーリン)』。シワが出てくるぜ」
隣で腕組をして座っていた若者が言う。それに対して『妖艶なる依林』と呼ばれた少女は
「うるさい・・・ヘルズクロウ・・・ガキの癖に」
そう言い返す。
「おい、このアマ。爪で突き刺してやろうか?」
さらにヘルズクロウと呼ばれた10代と思しき男性が言い返す。

「ケンカはしないようにな・・・」
依林とは反対に座っていた青年がヘルズクロウに向かって言う。
「アハハ、冗談だぜ。『残香丸』」
ヘルズクロウは軽い口調で残香丸と呼んだ男性に謝っている。

「さてさて・・・そろそろ始めてもいいのではないですかね?」
そんなやりとりをまるで無視するかのように話す男性がいる。イスに座り、片手で頬杖をついていた。
「まじめだな、『凶弾のリヒャエル』。まあ待ってな・・・あと一人来るからな」
「ふむ、そうですか・・・」
ヘルズクロウの返答を聞いたリヒャエルは、納得したように黙り込む。

「けど確かに遅い・・・なぁ惨殺丸。あいつはいつ来るか知らないか?」
不意にヘルズクロウが惨殺丸の方に向かって話しかける。

「・・・知らない」
言葉少なに、惨殺丸と呼ばれた女性は返答する。


「けっ、相変わらず『深淵』っつうのは時間にルーズだな」
王牙が偉そうにふんぞり返って悪態をついている。


「みんな、遅くなってごめんよー」

入り口の方から、声が聞こえる。

入ってきたのは、仮面をかぶった、少年か少女かの、子供だった。


ヘルズクロウが叫ぶ。
「大丈夫だ、みんな楽しく話しながら待ってたからな。なぁリヒャエル?」
「え・・・えぇ、まぁ」
リヒャエルは半分狼狽したように返事をする。

「おう、『心蝕のヒエロニムス』、相変わらず元気そうだな」
「『機忌鬼のからくり丸』も相変わらずキャストだねー」


「相変わらずヘンテコな面してやがるな、ヒエロニムス」
「王牙、ひどいなー。このお面はお気に入りなんだよー?」

「おや、惨殺丸どうしたんだい?不思議そうな顔をしてるよー?」
ヒエロニムスは惨殺丸に向かって話しかけてきた。

「・・・別に・・・」

「そうか、ならいいけど。何か心配事があるなら、何でも言うんだよー」

「・・・お前にだけは言わない・・・」

「はは、違いないな」

惨殺丸の答えに、からくり丸が笑う。


「もう、みんなして・・・ひどいなー。まぁ、いいか。仕事の話だよー」

一斉に、全員がヒエロニムスの方を向く。

ある者は座り直し、ある者は座り方は変えず、但し顔だけが今まで和やかな雰囲気から変わり、
そしてある者は何も変わらない。

「今度のターゲットは・・・ちょっと大勢になるんだ。
 ある惑星の『とある国』まるごと滅ぼしちゃおう!って仕事だから」

愉快そうにヒエロニムスは言った。さらに空気が一変する。


「ふふ、気合いが入ったようだね?さあ、暗殺者集団・・・『深淵』の活動開始だよ」


ヒエロニムスだけが最後まで愉快そうに言った。


  • 最終更新:2015-11-01 10:52:01