かすみst4-2「斬ったモノ」

チーム回線で、ミリエッタちゃんがぽつりと呟く。

「今夜はゆっくりしようかと思ってましたけど…迎撃も終わった事ですし、もう少しくらいお仕事に出ておこうかな…?」

「俺も付きあおうか」
チアキ君が言う。

「あら・・・それじゃ私も行こうかしら?昨日めまいでついていかれなかったし」
私がそう言うと、

「んじゃ俺もおつきあいするかな」
ロウフル君も続く。


・・・この日はいつもと変わらない、ただの任務のつもりだった。


「や、こんばんは残雪丸君」
「え?あら・・・あはは、かすみよ。残雪丸ちゃんに似てたかしら?」
「……ああ、これは失敬」


何も起こるはずもなく、平凡な毎日。


「・・・たまになんか声似てるって言われるのよね。残雪丸ちゃんと・・・」
「残雪丸・・・?んん、あの・・・お面の人だっけェ・・・?」
「そうだぜ~、お面かぶったこだぜ~」


そんな一日のはずだったのに。
なぜ私は、あれを思い出してしまったのだろう?



この日は惑星リリーパ、砂漠の奥地にいるグワナーダを退治に行く仕事であった。
それほど危険ではない仕事・・・。

「問題はらいんだぜ~、ハッハッハ~」
「見るからにやばそうなんだが」
「…やっぱり、酔っ払ってます~」

ロウフル君ですらほろ酔いで仕事を受ける、その程度の仕事。

「んー・・・カタナの切れ味はさすがね」
「ナーハッハッハ、今日も切れ味最高だぜ~」
「凄いですよねー…私なんか、ガンスラッシュのソードモードくらいしか扱った事ないから…」

雑談も交えながら進む私達。

「ふふ、私なんてガンスラッシュすらほとんど持ったことないから、ミリィちゃんの方が扱い上手いわね」
「あー、そういやカスミは刃物がダメらもんな~」
「かすみさんは…銃持ってるところしか、見たことないですね~」
「・・・」
「どうしたー青年ー、顔が暗いぞ~」
「ああ、いや・・・」

そうやって話をしながら進む。ほどなく、私達は奥地へとたどり着く。
グワナーダの存在が確認されているポイントへ着くと本部の情報通り、グワナーダが現れる。
既に戦い慣れた私達はグワナーダの攻撃を避けながら相手にする。


想定外の事態が起こったのはここから。
グワナーダが大量の触手を放ってきた。足下から次々に触手が現れる。

ロウフル君とチアキ君はそれでもその触手をなぎ払いながら近付いていく。
近づけなくなったのは近接武器を使わないミリエッタちゃん、そして使えない私。

「きゃっ…!?」
地面を突き破って伸びた触手が、ミリィちゃんの足を絡め取る。
すぐにガンスラッシュで足に絡みついた触手を切り払った。

「あぅっ!?」
すると別の触手に右手を打ち払われ、ガンスラッシュを手放してしまう。

放り出されたガンスラッシュが地面を滑るように転がり、私の足元へ転がる。


刃物が足元に転がったことで一瞬、頭の中が真っ白になる。
こんな時に、刃物を怖がってる場合じゃない。そう思って何とか意識を目の前の敵へ向ける。

「あ・・・!」

目に入ったのは、先ほどの触手がそのまま首に巻きつき、細い喉を締め上げられているミリィちゃん・・・。
逃れようにも先ほどの触手が今度は足に絡まり、身体が半分浮きそうに持ち上げられてしまっている。


「んぐぅッ…!?…ぁ……かは…っ…!」
苦しがるミリィちゃんを見た瞬間、私は考えずに行動していた。

「く…苦しっ…」
きっと銃じゃ触手を外せない、そう思ったのだと・・・思う。


私は足元のガンスラッシュを拾い上げ、ミリィちゃんに絡みついた触手向かって斬りかかっていた。

「っはぁっ!…た、助かりました…」


「っはぁっ!…た、助かりました…」

拘束していた敵を切り落とし、自由になった仲間が、私に向かって言った。

「・・・」

私は何も言わなかった。そして、そのまま目の前の、他の相手を、

「・・・邪魔」

切り裂いた
けれど相手の数は多く、このままここで3人がかりで相手をするのは
得策とは思えなかった。

「リヒャエル・・・残香丸・・・下がって・・・」

私は後ろにいた二人に対して、そう声をかける。
・・・記憶が鮮明になってきた。場所は生い茂った森の中・・・でもすこし開かれた場所。

切り裂いた相手は・・・人間、だった。
二人を下がるように言った私は・・・その後、そこに居た相手を全員・・・。


「おい、かすみさん!おい、しっかりしろ!!」

「・・・え・・・?」

気がつくと、目の前にはチアキ君がいた。
私の肩を掴んでいる。

てっきり私は気絶していたのだと思った。
「あ・・・ありがとう。ムーンアトマイザー使ってくれたのかしら?」

ふと見ると、3人とも私の方の周りにいた。グワナーダをほっといて、だ。
状況が分かっていない私に、

「もうお仕事は終了してるぜ?」
とロウフル君は言った。

終わってる・・・私が気絶してる間に倒してくれたのかしら?
そう思ってふと右手を見ると・・・私はやっとガンスラッシュを持っていることに気がつく。

「あ・・・あら?これ・・・あ、ミリィちゃんの・・・?・・・・・・・あ」

やっと思い出してきた。ミリィちゃんを助ける為に、私はガンスラッシュを持ったのだった。
突然手が震えてくる。いつもの私の症状。

刃物を突きつけられるのも、それ以上に刃物を持つのがダメ。
なぜか手が震え出す。まるで心の中の何かが拒否しているように


「ぁ、あはは・・・手が離せない・・・みたい」

そう言うとチアキ君が私の手からガンスラッシュを放すように指を外してくれる。

「で、でも私・・・何か斬った、のよね・・・何・・・・っ・・・」


不意に何かが私の頭の中奥底から浮かび上がってくる。

広い部屋、オリエンタル・テーマに似た部屋・・・確かみんながジャポネ風と言っていた。
その部屋の真ん中で私は立ちすくむ。

部屋の壁や天井には赤い斑点など、赤色の意味の分からない模様がついていた。


・・・模様?
違う、模様じゃない・・・あれは・・・血だ。紛れもなく。血が部屋中に飛び散っている。


私はそれに動じること無く立っている。真っ赤に塗れていたカタナを持って。
そして、床には無数の人が・・・血まみれになって倒れていた。

「かすみさん…?」
「おい、大丈夫か?やっぱ体調が・・・」

「・・・ぅ・・・な、何でも・・・ないわ・・・何でも・・・」


ミリィちゃんとロウフル君の呼びかけで、現実に引き戻される私。

気がつくとチアキ君が私の手からガンスラッシュを取ってくれていた。



私は3人に何か言っていたかと聞いてみる。
すると3人は私が「リヒャエル」「残香丸」という名前を読んでいたと言っていた。

どうやら、最初に思い出していたことらしい。
その記憶と混同したまま、私はグワナーダと戦っていた。


そして、私は次に思い出した出来事を話す。
ジャポネ様式の部屋で、血まみれになった部屋で血まみれのカタナを持っていた記憶を・・・・。



「…そ、そんなのって…、何かの間違いですよっ…。なにかの映画のシーンと、混同してる…とか…っ…」
「…だって、かすみさんが、そんなこと…するはずが……」
ミリィちゃんがそう言ってくれた。だけど私は、
「・・・でも、昔の私は、そんなことする人・・・だったのかも。
 ごめんなさい・・・なんだか自分が・・・自分に自信なくなってきちゃった・・・」


ハヅキさんが言うとおり・・・私は家族を殺した、のかも知れない。と思った。
つまり、私には家族なんていない・・・私が全員・・・。

私は、自分が思い出した記憶で頭がいっぱいになっていた。
「私、何したのよ・・・!誰なの・・・リヒャエル、残香丸って・・・!!」


するとミリィちゃんがポツリと言った。

「…残香丸…なんだか、残雪丸さんに、凄くよく似た名前、ですよね…」
「いわれてみれば確かに・・・」

ふと、同じC小隊の隊員の名前、残雪丸ちゃんの名前が出てくる。

そういえば似ている気がする。

「もしかしたらなにかわかるかもしれないな」
「ここまで似てると、偶然では片付けられないしな」

こうして、残雪丸ちゃんに聞いてみる、ということになった。何が聞けるのか・・・。



「それと・・・前も言ったが、記憶に押しつぶされそうになったら、俺は支えてやるからな
 たとえその記憶がどんなものでも・・・な」

同じ記憶喪失だったロウフル君の言葉には、説得力があるような気がした。

「といっても、俺よりもしっかりとした支えになりそうなヤツはそこにいるがな」

と、ロウフル君はすぐに言い直す。親指でチアキを指差していた。

「私だって…昔のかすみさんがどんな人でも、私はかすみさんの事、大好きですからねっ…!」
ミリィちゃんは、私の記憶の話をしても、そう言ってくれた。

「ミリィちゃん・・・でも、私、もしかしたら過去に人を・・・」
「それでも、かすみさんは私の大切な人ですっ。さっきだって、私の事、助けてくれましたし…!」
「ミリィちゃん・・・でもあれは夢中で・・・」

そう言いかけると、チアキ君がこう言ってくれる。

「夢中だからこそ、本質が出るものじゃないのか」
「かすみさんは心の底から、ミリエッタを助けたかったってことだろう」

「つまりはそういうことだ、今のかすみはやさしいおねぇさんってわけだな」
「うん、うんっ…!」
「今も、昔もな」
3人ともこう言ってくれた。


「ん・・・ありがとうね。」
「ロウフル君も・・・ミリィちゃんも、ありがとう・・・」
思わず涙が出そうになるほど、嬉しかった。

そして、
「私は・・・その、大丈夫・・・だから」
「大丈夫じゃないだろう」

すぐに看破された私に、チアキ君は、

「顔に書いてあるぞ「不安で仕方ありません」ってな」
そして、続けてこう言った。

「つぶれる前に、必ず頼れ」

こう行ってくれる優しさが本当に嬉しかった。

それと、同時に・・・不安も芽生える。
私はこんな優しさを貰ってもいいのだろうか?


・・・おそらく、きっと殺人者な私に・・・。


中の人より
実は一番大変なのは「皆さんの発言を削ってまとめること」だったりします・・・。
今回は前回の反省を踏まえて、泣く泣く切り詰めてみましたー。

  • 最終更新:2015-11-01 10:45:46