かすみst1「ゆめ」

暗い一室に、人が集まっていた。
申し訳程度の照明が辛うじて人を認識できる程度の明かりを生んでいる。

なんだ、またルークは居ないのか
誰かが声を発する。部屋はそこそこに広く、真ん中に大きな丸いテーブルがあり、囲うようにイスが並んでいた。

「ハハッ、仕方ないさ。彼がいないのはいつものことだからね!」
明るい声が聞こえる。

「へいへい、『プリンス・アドニス』は相変わらず真面目でいらっしゃる」
そう返す声の主。

「おや、『冥杖のオルト』君はご機嫌斜めのようだね!」
アドニスと呼ばれた男性は、さらに声の口調を変えずに返答する。
『冥杖のオルト』と呼ばれた少年は言い返すのをやめ、そっぽを向く。

「くだらない・・・パパといる時間を割いて来てるんだから、早く始めて」
二人のやりとりを見ながら突き放す言い方をする少女。イスにちょこんと座った、可愛らしい姿とは裏腹だった。

「そう怒ることはないぞ、『可憐なるエストレヤ』。折角の可憐さが台無しだ」
隣で腕組をして座っていた老人が言う。それに対して『可憐なるエストレヤ』と呼ばれた少女は
「うるさい・・・フィネガン。裸の癖に・・・」
そう言い返す。
「ワシがヘンタイみたいな言い方はやめろぉ!」
さらにフィネガンと呼ばれた中年の男性が言い返す。

「大きな声、出さないで・・・っ」
エストレヤとは反対に座っていた少女がフィネガンに向かって言う。
「あ、いやすまんな。『深淵のマリナル』。」
フィネガンはばつが悪そうにマリナルと呼んだ女性に謝っている。

「さてさて・・・そろそろ始めてもいいのではないか?」
そんなやりとりをまるで無視するかのように話す女性がいる。イスに座り、片手で頬杖をついていた。
「気が早いな、『激震のリグレット』。まあ待つのだ・・・あと一人来るからな」
「そうか・・・」
フィネガンの返答を聞いたリグレットは、納得したように黙り込む。

「だが確かに遅い・・・なぁ@#!。彼はいつ来るか知らないか?」
不意にフィネガンが私の方に向かって話しかける。

そうか、私もここにいたんだった。
よく名前が聞き取れなかったけど、きっと私のことだと思って返事を返す。

「・・・知らない」
あれ?なんで私、こんなにぶっきらぼうなんだろう・・・?


そう思った瞬間、私はこれが夢だと気付く。
また、こんな夢を見てるんだ・・・。

「へっ、相変わらず『ずんだ餅ーズ』っつうのは時間にルーズだな」
オルト君が偉そうにふんぞり返って悪態をついている。なんだか夢でもオルト君らしいと思った。
ていうか『ずんだ餅ーズ』って何よ・・・。


「みんな、遅くなってごめんよー」

入り口の方から、声が聞こえる。

入ってきたのは、仮面をかぶった少年・・・少女?
え、誰・・・これ・・・?

フィネガンが叫ぶ。
「大丈夫だ、みんな楽しく話しながら待っとったからな。なぁリグレット?」
「まぁ・・・まぁ、な」
リグレットは半分狼狽したように返事をする。

「やあ!『@#!のヒエロニムス』、相変わらず元気そうだね!」
「『プリンス・アドニス』も相変わらずプリンスだねー」

ヒエロニムスと呼ばれた仮面を被った子供・・・誰?
確か残雪丸という子はいたはずだけど、こんな子じゃなかった。

第一、ヒエロニムスなんて子、会ったことない・・・。

「相変わらずヘンテコな面してやがるな、ヒエロニムス」
「オルト君、ひどいなー。このお面はお気に入りなんだよー?」
特殊C支援小隊に・・・こんな子は、いない。

「おや、@#!どうしたんだい?不思議そうな顔をしてるよー?」
ヒエロニムスは私に向かって話しかけてきた。

仮面をかぶった少年・・・少女?とにかく、仮面が徐々に迫ってきた。
こちらに向かって歩いてきているのだ。

イスから立ち上がれない、そもそも身体が金縛りにあったように動かなくなっていた。

「ふふふ・・・どうやらボクのこと忘れちゃったのかなー?」

抑揚のない声が恐怖を感じ、逃げ出したくなる。
しかし身体は動かない。

「大丈夫だよ、@#!。君が忘れてもー・・・・」
ついに私の目前にまで迫った、仮面。
気付けば周りのみんなも、私の方を見ていた。・・・みんな?違う。
仮面と・・・見知らぬ顔、顔、顔・・・・誰一人見覚えがない。
あなた達は・・・誰?


「・・・君のしたことは・・・いつまでも、消えないんだからね・・・」


ハッと目を開けると、見慣れた自室の天井が見えた。

私は、やはり夢を見ていたのだ。

  • 最終更新:2015-11-01 10:40:15